ISO 9241-210は、人間中心設計(HCD)を体系化した国際規格として、現代のプロダクト開発において重要な指針となっています。本記事では、規格の概要から実践的な活用方法まで詳しく解説します。
ISO 9241-210は「人間工学 - インタラクティブシステムの人間中心設計」を規定する国際規格です。
## 規格の変遷
- 初版: 2010年発行
- 第2版: 2019年発行(現行版)
- 前身: ISO 13407(1999年)
主要な目標:
ISO 9241-210では、HCDの基本原則として以下の4つを定義しています。
1. 設計はユーザー、タスク、環境の明確な理解に基づく
2. ユーザーは設計および開発プロセス全体を通じて関与する
3. 設計はユーザー中心の評価によって推進・改良される
4. プロセスは反復的である
活動内容:
成果物例:
- ユーザーペルソナ
- ユーザージャーニーマップ
- タスクフロー図
- 環境分析レポート
活動内容:
要求事項の分類:
設計アプローチ:
プロトタイプの種類:
低忠実度:
- ペーパープロトタイプ
- ワイヤーフレーム
高忠実度:
- インタラクティブプロトタイプ
- 機能プロトタイプ
評価手法:
評価指標:
「製品、システム、サービスの利用や利用予定から生じる人の知覚や反応」
UXの特徴:
## UXとユーザビリティの関係性
UX(包括的体験)
├── 利用前の体験
│ ├── ブランド認知
│ └── 期待値形成
├── 利用中の体験
│ ├── ユーザビリティ ← ISO 9241-11
│ ├── 感情的反応
│ └── 価値実感
└── 利用後の体験
├── 満足度
└── 再利用意向
アジャイル開発との組み合わせ:
スプリント0: 利用状況の理解
スプリント1-N: 設計・開発・評価の反復
リリース後: 継続的なUX改善
デザイン思考との関係:
段階1: 基盤整備
段階2: パイロット実施
段階3: 本格展開
解決策:
解決策:
解決策:
問題1 ISO 9241-210の正式名称として正しいものはどれか。
A. 人間工学 - ユーザビリティの測定と評価
B. 人間工学 - インタラクティブシステムの人間中心設計
C. 情報技術 - ユーザーインターフェース設計指針
D. 品質管理 - ユーザーエクスペリエンス評価基準
問題2 ISO 9241-210におけるUXの定義として最も適切なものはどれか。
A. 製品の使いやすさと効率性の度合い
B. ユーザーインターフェースの視覚的品質
C. 製品、システム、サービスの利用や利用予定から生じる人の知覚や反応
D. システムの機能的要件と性能指標
問題3 HCDの4つのプロセス活動に含まれないものはどれか。
A. 利用状況の理解と明示
B. ユーザー要求事項の明示
C. 技術仕様の詳細設計
D. 要求事項に照らした設計の評価
問題4 「利用状況の理解と明示」プロセスで作成される成果物として適切でないものはどれか。
A. ユーザーペルソナ
B. ユーザージャーニーマップ
C. 機能仕様書
D. 環境分析レポート
問題5 HCDの基本原則「設計はユーザー中心の評価によって推進・改良される」を実践する活動として最も適切なものはどれか。
A. 競合製品の機能比較分析
B. 技術的制約の詳細調査
C. 定期的なユーザビリティテストの実施
D. 開発工数の見積もり作成
問題6 HCDプロセスが「反復的である」という原則の意味として正しいものはどれか。
A. 同じ作業を何度も繰り返すこと
B. 段階的な改善サイクルを継続すること
C. プロジェクトを最初からやり直すこと
D. 複数のプロジェクトを並行実行すること
問題7 アジャイル開発とHCDプロセスを統合する際、スプリント0で主に実施すべき活動はどれか。
A. 詳細なUI設計とプロトタイプ作成
B. 利用状況の理解とユーザー要求事項の明示
C. システムアーキテクチャの設計
D. 最終的なユーザビリティテスト
問題8 HCD導入の障壁として「ステークホルダーの理解不足」がある場合、最も効果的な解決策はどれか。
A. 導入を延期して時期を待つ
B. 小規模で密かに実施する
C. ROIの可視化と成功事例の共有
D. 外部コンサルタントに全面委託
問題9 HCDプロセスにおける「設計の評価」で使用する指標の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
A. 開発コストと開発期間のみ
B. 技術的性能と安定性のみ
C. 定量指標(完了率、エラー率)と定性指標(満足度、使用感)
D. 売上高と市場シェアのみ
問題10 ユーザビリティテストの実施タイミングとして、HCDプロセスの観点から最も適切なものはどれか。
A. 開発完了後に1回のみ実施
B. プロジェクト開始前に1回のみ実施
C. 設計・開発プロセス全体を通じて反復的に実施
D. 市場リリース後に1回のみ実施
問題11 ISO 9241-210とISO 9241-11の関係として最も適切なものはどれか。
A. 両者は全く異なる分野の規格である
B. 9241-210は9241-11のユーザビリティ概念を包含したUX向上のプロセス規格
C. 9241-11は9241-210の改訂版である
D. 両者は競合する規格である
問題12 HCDプロセスにおいて「ユーザーは設計および開発プロセス全体を通じて関与する」原則を実践する方法として適切でないものはどれか。
A. 定期的なユーザーインタビューの実施
B. プロトタイプに対するユーザーフィードバックの収集
C. 開発チーム内のみでの意思決定
D. 継続的なユーザビリティテストの実施
調査・分析:
- Miro (ユーザージャーニーマップ作成)
- Figma (ペルソナ作成)
プロトタイピング:
- Figma, Sketch (UIプロトタイプ)
- InVision, Principle (インタラクション)
評価・テスト:
- UserTesting (リモートユーザビリティテスト)
- Hotjar (ユーザー行動分析)
ISO 9241-210は、人間中心設計を体系化した重要な国際規格です。4つのプロセス活動を反復的に実施することで、ユーザビリティとUXの両面から優れた製品・サービスを開発できます。
成功のポイント:
HCD基礎検定の取得を通じて、より深い理解と実践スキルを身につけることをお勧めします。
問題1:B - ISO 9241-210の正式名称は「人間工学 - インタラクティブシステムの人間中心設計」です。
問題2:C - UXは「製品、システム、サービスの利用や利用予定から生じる人の知覚や反応」と定義されています。
問題3:C - 技術仕様の詳細設計はHCDプロセスの直接的な活動ではありません。HCDは設計の方向性を定める上位プロセスです。
問題4:C - 機能仕様書は「ユーザー要求事項の明示」プロセスで作成される成果物です。
問題5:C - ユーザー中心の評価の代表例がユーザビリティテストです。実際のユーザーによる評価が重要です。
問題6:B - 反復的プロセスは、段階的な改善サイクルを継続することを意味します。
問題7:B - スプリント0では、開発に入る前の基盤となる理解と要求定義を行います。
問題8:C - ステークホルダーの理解促進には、具体的な価値(ROI)と成功事例の提示が効果的です。
問題9:C - 包括的な評価には定量指標と定性指標の両方が必要です。
問題10:C - HCDは反復的プロセスであり、継続的な評価が基本原則です。
問題11:B - 9241-210は9241-11のユーザビリティ概念を含むより広範囲なUX向上プロセスを規定しています。
問題12:C - ユーザー関与の原則に反するのは、開発チーム内のみでの意思決定です。ユーザーの継続的な参加が重要です。
この記事はISO 9241-210:2019および関連規格を基準としています。